王家の日常 忍者ブログ
最近、腸を揉んでいます(何)
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2024/11/01 (Fri)
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2009/02/14 (Sat)
【小春編】

「あ・・・ぎ、銀さん!!」
「小春か。なんや?」
「あ・・・あのな・・・・・・」
「うん?」
「あたしな・・・・・・・・・」
「どうしたんや?」
「銀さんに、ちょ、ちょ、ちょちょ・・・・・・・・・な、何でもない」
可愛らしいラッピングは、緊張で強く握りしめたせいで、ぐちゃぐちゃになってしまった。幸い、中身の手作りブラウニーは無事だったけれど。
「ユウちゃぁあん!!」
「阿呆」
「そんなんあたしが一番よく分かっとるわ~あ~ん」
毎度のことと呆れるユウちゃんに、あたしは泣きついた。
だって、一生分の勇気を使い果たしたって、まだまだ足りないくらい、銀さんのことが好きでたまらないのだ。目の前に立つだけで、足が震えてどうしようもなくなる。
「しゃあないなぁ」
溜息を隠さず、でもユウちゃんは名案を考えてくれた。
毎年テニス部の皆で、蔵りんが大量に貰うチョコのお相伴に預かるんだけれど、そのチョコの山に紛れさせてさりげなく銀さんに食べさせてしまえばいい。と言うのだ。
「え?どうやるん?」
「これ美味かったで~、とか何とか言って口に押し込めてしまえばええやろ」
「!!ユウちゃん、あたまいい~」


【サエ樹編】

「ねえ、樹っちゃん。サエが不気味なくらい機嫌がいいんだけど、もうチョコあげたの?」
「まだなのね・・・」
「てことはあげる予定はあるんだ?だからサエもあんなに気色悪いくらいに浮かれまくってるんだ?」
「・・・それだけじゃ、ないと思います」
浮かない顔をした樹っちゃんが語ったところによると、毎年おじいが部員全員に配るチョコを作る手伝いを樹っちゃんが買って出たことに端を発する。そのことを知ったサエが、皆で食べるなら大きいチョコレートケーキを3段重ねとかにしない?と話を持ちかけた。華やかでいいね~、とおじいOKが出て、樹っちゃんは樹っちゃんで小さいものをいくつも作るより楽だと思った。が、いざケーキを焼いて、3段に重ねて、生クリームと果物で飾りつけをしているとき、樹っちゃんは気付いてしまった。
「・・・それさー」
「亮・・・後生だから、それ以上は言わないで欲しいのね」
「いや、これは俺が言うべきだと思うから、言わせてよ」
「わざわざ言わなくても分かってるのね」
「でも、あえて言わせてよ。ていうかさ、ケーキ3段重ねって、それウェディングケーキじゃん?」
「・・・気付かなかったんです」
「サエ、絶対に皆の前で樹っちゃんとケーキ入刀やるつもりだよ」
「だから、気付かなかったのね!!」


【不二タカ編】

う、と小さく呻いたのを、河村は聞き逃さなかった。
振り返れば、不二は顔を顰めてカップを睨んでいた。紙で出来たカップの上に被さるプラスチックの蓋の飲み口からは、白い湯気が漏れている。
「不二?舌火傷でもした?大丈夫?」
「・・・違う。これ、ちょっと甘過ぎるよ」
ついさっき、コーヒーショップで買ったばかりのそれの中身が何なのか、河村は知らない。不二が注文しているとき、そばにいなかったのだ。いつもなら甘い飲み物を買ったりしないのに、珍しい。
「たまにはいいかなーって思ったけど・・・失敗した」
「俺のと取り替える?そんなに甘くないから、不二でも飲めるよ?」
「え?でも、これ、結構凄いよ?」
躊躇う不二に、じゃあ味見だけでも、とお互いのカップを取り替える。河村はゆっくりとカップを傾けて、まだまだ熱いそれをゆっくりと飲み込んだ。
「うん。言うほど甘くないよ?」
「えぇ?」
「だから不二はそっち飲んでいいよ」
そう言って、もう一口こくりと飲む。それを見て、不二は困ったような、でも嬉しそうな顔をして、ありがとう、と言った。


(不二が頼んだのはホットチョコレートです。もちろんわざとです)
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